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国境の夜想曲

Notturno


- イタリア、フランス、ドイツ/2020/アラビア語、クルド語/カラー/DCP/100分

監督、撮影、音声:ジャンフランコ・ロージ
編集:ヤコポ・クアドリ
編集協力:ファブリツィオ・フェデリコ
製作:ドナテラ・パレルモ、ジャンフランコ・ロージ、セルジュ・ラルー、カミーユ・レムレ、ウルワ・ナイラビーヤ、エヴァ=マリア・ウィアーツ
製作会社:21uno Film、Stemal Entertainment、Rai Cinema
配給:The Match Factory
配給(日本国内):ビターズ・エンド

ISISに実行支配された地域を含む、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境付近で、監督が3年間をかけて取材・撮影した映像詩的ドキュメンタリー。そのカメラは、息子を監獄で失った母たちの姿、精神病棟で練習が続けられる舞台劇、ISISの残虐行為でトラウマを植え付けられた子どもたちの絵などを、断片的に捉えていく。映画の示す静謐な光景を観る者は、画面の外に広がっている記憶の闇に引き寄せられながら、やがて訪れる夜明けの兆しを探してしまう。(TS)



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【監督のことば】『国境の夜想曲』は光の映画であり、暗闇の映画ではありません。人びとの驚くべき生きる力を物語っています。死には何の魅力もなく、ただそこにあるのは悪夢のみです。大洪水から数の発明に至るまで、多くの歴史が最初の一歩を踏み出したこれらの場所では、いまでは所属や征服を主張するために旗が掲げられています。次から次へと、絶え間なく、聖地や工業地帯、未開の畑、羊飼いの村、爆撃で抉り出された地域、廃墟の風景、砂漠、電線の絡み合い、漁船がこっそりと動く沼地などが続いています。これらは中東の悲痛なコントラストをなすものの一部です。『国境の夜想曲』はこれらの矛盾を批判的な言説で分析しようとするのではなく、むしろそれに声を与えようとするものです。この映画は、戦争の闇に陥った人間への頌歌です。ショパンの「夜想曲」のように、ここでも暗闇は口実であり、生きているものを響かせる機会を与えるものです。


- ジャンフランコ・ロージ

エリトリア、アスマラで生まれる。2010年、メキシコの麻薬カルテルから逃亡中のヒットマンのインタビュー映画『El Sicario: Room 164』を発表し、ヴェネチア国際映画祭で国際批評家連盟賞受賞。 2013年、ローマを囲むグランデ・ラッコルド・アヌラーレ(環状線)の周りに生きる人びとの知られざる物語を紡いだ『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』でヴェネチア国際映画祭金獅子賞を受賞。ドキュメンタリー映画で初の同賞受賞を果たした。2016年、ランペドゥーサ島の住人や漁師、移民の物語『海は燃えている 〜イタリア最南端の小さな島〜』で、ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。