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アジア千波万波
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  • [パレスティナ、エジプト]

    私たちは距離を測ることから始めた

    we began by measuring distance

    - パレスティナ、エジプト/2009/アラビア語/カラー/ Blu-ray(SD)/19分

    監督、撮影、編集、提供:バスマ・アルシャリーフ

    ローマ=ジュネーヴ、ガザ=エルサレム、物理的な都市間の距離を測る謎の集団、そして測られた距離が示される。その数値が、やがて政治的な意味を帯びていく過程。既視感のあるパレスティナのイメージに、「神の声」のナレーターの声が覆いかぶさり、パレスティナの複雑なナショナリズムを浮かび上がらせる。豊穣な音とテクストが何層にも重なり、不思議と連続性を帯びてくる映像は、やがてパレスティナの寓話へとつながっていく。



    【監督のことば】私の作品は政治的問題を探究するものであり、そこでは内容を読解するための視覚的構造において独自に生み出したコードを用いる。幻影と幻滅、真実と陰謀、事実と歴史といった概念が、さまざまな形で現われる。焦点の中心といったものはない。物質的情報を多様な方法で読解しうる、ある言語、ある空間を作り出していき、情報を理解するためというよりも、経験するための手段を探っていくことが、これらの問題についての私の探究だ。

    -  創作に影響を与え、動かしていくにあたっては、住んでいる環境、これまでの自分の経験に依っている。ある風景が、または都市環境がどのように機能しているかについての、書かれざる言語に私は注目する。場を規定し、構築しているものは何か。その場で、あるいはその場との関連で、人は他の人とどのように関係しているのか。物語がどのように機能するか、及びどのように操作されるかを描くにあたり、私が形式的構造として用いたのは、言語、ビデオ、フィルム、テクスト、写真である。そして私は、個人のアイデンティティや主観的経験との関連で、歴史および政治を表象するという実験を試みた。

     公と私、政治と個人、フィクションとファンタジーの間にある余白に、私は関心を持っている。言葉がイメージへと変わること、イメージが物質へと変わること、作品の中のさまざまな層がサウンドによって立ち現われることも、私の関心の対象だ。私の制作活動において最も重要なのは、特定の場、特定の文化、あるいは特定の媒体からさえも、作品を切り離したいという衝動である。特定の政治的問題や、きわめて濃密なイメージ、陳腐なフッテージ、詩的なテクストを取り上げ、これら全てを定義されざるもの、物質的なものへと変えること。そして、全く共通点のない諸要素を合わせて新たな情報を生み出すことに、私は興味を持っている。


    - バスマ・アルシャリーフ

    1983年生まれ。映像、写真、音響、言語を用いるヴィジュアル・アーティスト。2007年、イリノイ大学芸術デザイン学部で芸術学修士号を取得。以来、カイロ、ベイルート、アンマンで活動。作品は、ベルリン国際映画祭Forum Expanded(2011)、トロント国際映画祭(2010)、等、数多くの展覧会や映画祭で上映されている。