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アジア千波万波
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  • 審査員
  • 瀬々敬久
  • 陳俊志(ミッキー・チェン)
  • 審査員
    陳俊志(ミッキー・チェン)


    -●審査員のことば

     私がドキュメンタリーを撮り始めたのは1996年。以来十数年間、私は、多くの仲間たちによって続々と作品が生み出される、台湾ドキュメンタリー勃興の時代に身を置いてきた。私自身は、長らく、台湾の同性愛をテーマとし、そのアイデンティティ・コミュニティの醸成に努めてきた。そのため当然のように、台湾が長い歳月をかけて遂げた政治的変化に敏感になり、私たちドキュメンタリー作家が作品を通して、人権や社会運動やその他の社会的なテーマに向けて何ができるのか、という事柄に敏感になっていった。

     同時に、ひとりのインディペンデント作家として創作を続ける中で、創作それ自体が持つ、複雑な側面に思考を集中させるようにもなっていった。アイデンティティのために闘った初期から、創作のスタイルや言語や美学に対して敏感になっていった変化の道筋を、あたかもマラソン・ランナーのように駆けてきたわけである。

     作品に内在する深さを見つめ、その構造とダイナミクスを凝視するとき、ドキュメンタリーは、芸術として、また叙事や政治の表現スタイルとして、とてつもない実験と開拓の可能性を秘めている。

     いま私にとって、ドキュメンタリーは豊饒な海であり世界である。この芒洋たる空間の中で、さまざまな作家が、地の底に埋もれた縷々の言葉を、ドキュメンタリーというスタイルを通して紡ぎ出そうとしていることだろう。彼女あるいは彼はきっと、豊かで、境界を越えたスタイルと言語を選び取り、見る者をたじろがせ、思考させ、疑わせ、感嘆させ、そして心酔させるようなドキュメンタリーを創り出しているに違いない。


    陳俊志 (ミッキー・チェン)

    クィアとジェンダーの問題にこだわり、台湾でドキュメンタリー映画を制作している。街頭での抗議活動にも参加し、ドキュメンタリー制作も社会を変える活動のひとつであると信じている。初のドキュメンタリー作品『Not Simply a Wedding Banquet』(1997)を撮ったのは1996年。彼の作品はゲイ・レズビアン映画祭、アジアン・アメリカン映画祭やドキュメンタリー映画祭で上映されている。1999年の『美麗少年』(YIDFF 1999)は台北で劇場公開され興行として成功、また、1999年の台北映画祭Independent Spirit Award を受賞。その後、数年間にわたり台湾南部の中学でいじめを受けていた少年の殺人事件を追った。『Memorandum on Happiness』(2003)ではレズビアンカップルの劇的な別れとドメスティック・バイオレンスを記録、『非婚という名の家』(2005)で2組のゲイの悲恋物語を撮った。最新作の『My Mother Lives in Queens, NY 』(2011)は自身の複雑な家族の物語の第1部になる予定。


    上映作品『非婚という名の家』は、「回到一圏:日台ドキュメンタリーの12年後」ページ参照 >>