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  • [フランス、イラン、スイス]

    バシージ

    Bassidji

    - フランス、イラン、スイス/2009/ペルシャ語/カラー/35mm/114分

    監督、脚本:メーラン・タマドン 
    撮影:マジド・ゴルジアン
    編集:アンドレ・ダヴァンチュール、ロドルフ・モラ 
    音響:ジェローム・キュエンデ
    製作:カトリーヌ・デュサール、フランク・ユィアール、 エレーナ・タッティ、ティエリー・スピヒャー、メーラン・タマドン
    提供:Urban Distribution International
    www.urbandistrib.com

    イラン・イラク戦争(1980−1988年)で多くの兵士が命を落とした象徴的な場所。監督は、イスラム国家を防衛するバシージ(市民兵組織)のメンバーの案内で、イラクとの国境近くにある砂漠の「聖地」から首都へと、映画作りを模索しながら旅をする。道中、人々の想いを拾い集めながら、イラン社会に影響を与えるバシージの存在、そして市井の人々を通じて、一枚岩でないイラン社会を見つめる。やがて、メンバーらと腹を割った対話を試みる監督だが……。



    【監督のことば】バシージは、イラン・イスラム共和国における大衆支持の重要な柱だ。その目的は、貧しい人々への援助や緊急時(戦争、公衆衛生危機、地震等)における総動員、宗教的価値観の宣伝を通して、崇高なイスラム社会を守ろうというものだ。

     宗教的価値観の宣伝という役割、すなわち、道徳の番人として、イスラム革命後に導入された宗教制度を受け入れられない人々に対し、有効な抑圧組織であることが証明された。つまり反対派や信仰心が薄い人々にとって、バシージは抑圧と不寛容の代名詞となっていった。

     私はバシージの指針であるパラダイムをもっとよく理解したいと思い、彼らの世界に入り込んだ。社会的、政治的なプロジェクトであると同時に個人的な探求の旅でもあるこの映画は、同じ社会に属しながらもまったく異なる者同士(イランの過激分子と、祖国を離れフランスに暮らすイラン人であり、知識人であり、無神論者である私)を引き合わせ、面と向かって意見を交換しようとする試みだ。

     恐れを抱きながらも、私は常に本質的な質問をし、聞かれたことに対しては正直に答えた。根本的に相容れず、完全に意見が食い違ったとしても、私は同じ社会に属す者同士がすべき議論をしようと真剣に努力した。お互いを人間として認め合い、自分たちの社会や文化、そして自分たちの世界の存続を望むならば、すべき議論を。

     そのため、私は常に直接的な批判は避け、じっくり耳を傾けると同時に、自分との違いを認識し、自分自身や自分の考えに対して責任を持つよう努めた。普段は、公式なプロパガンダが許す範囲内でしか自分を表現しない人々と、直接的、率直かつ裏表ない対話を築いた。

     幾度となくイランへ足を運び、数多くの会合も重ねた。最初に撮影した何本かのテープが諜報機関に一時的に押収されたこと、真剣な対話、そして共に祝ったことなどのすべてが、この映画を個人的なプロジェクトへと変えていった。それは映画同様、重要な道のりだった。


    - メーラン・タマドン

    建築家、映画監督。1984年、12歳の時にイランからフランスへ移住。パリ・ラヴィレット建築大学を2000年に卒業。1999年には都市と土地利用に関する批評雑誌「L'Arrosoir」の立ち上げに参加。2000年から4年間はイランで、建築家として働いた。

    2002年より、芸術分野でのキャリアを築きはじめる。テヘラン現代美術館でのコンセプチュアル・アート展では、「From the Eyes of a Stroller」というインスタレーションを行った。また、「Moments of Agony」(2003)、「Friendship」(2005)という2冊のエッセイをペルシャ語で発表。2004年には初の中編ドキュメンタリー映画である『Behesht Zahra, Mothers of Martyrs』を完成させ、多くの国際映画祭で上映された。本作は初の長編ドキュメンタリーとなる。