善き谷の物語
Good Valley StoriesHistorias del buen valle
- スペイン、フランス/2025/スペイン語/カラー、 モノクロ/DCP/122分
監督、脚本、編集:ホセ・ルイス・ゲリン
撮影:アリシア・アルミニャーナ
美術:クララ・セラーノ
音響:マキシミリアーノ・マルティネス
音楽:アナヒット・シモニアン
製作:ハビエル・ラフエンテ、ホナス・トルエバ、ガエル・ジョーンズ、ホセ・ルイス・ゲリン
配給:Shellac Films
バルセロナ郊外のバルボナ地区では、20世紀半ばから移り住んできた住民の家族と、近年世界各地からやってくる新世代の移民たちがともに暮らしている。幹線道路や鉄道により周囲から隔てられ、開発から取り残されてきたこの町で、彼らは野菜や花を育て、歌い踊り、水路で禁じられた遊泳に興じる。住民たちと3年をかけて撮影した本作は、さまざまな人生や歴史の影を折り重ねるように反射させ、透過させながら、変わり続ける世界の現在を果敢に映し出す。
【監督のことば】はじめに8mmフィルムで観察的な撮影を行ったあと、農村と都市のはざまの多様な郊外の風景に近づくために、キャスティングを行った。そのなかの会話で、あなたは来るのが遅すぎた、この町の物語はもう終わってしまったと繰り返し言われた。
村人たちが語っていたのは、もちろん移民たちの叙事詩についてだった。彼らは町の外れに住みつき、夜中にこっそり小屋を建て、行政の都市計画を無視して独自の町の形を作っていった。法からの逸脱、洪水、水をめぐる争い、電気、下水、学校、交通……些細な異同はあるだろうが、大都市の周縁部でたびたび起こる話だ。
現在への視点の欠如によって、21世紀のバルボナ地区のための新しい物語が住民たちには見えなくなっているのだと思った。作中で12の言語が飛び交うように、そこはグローバルな共同体のサウンドボックスである。
私は、変化の途上でぼやけているこの景色に意味を与えるまなざしを見つけ、それを介して見る必要があった。先祖から伝わる農民の哲学や猜疑心、インドの村の祖父から受け継いだ遺産、ギニアの河の太鼓、ウクライナの暗い森……正しいイメージを映し出すためにこうした想像力を呼び起こし、私たちを覆う現実の景色にそれらを重ね合わせ、絶え間なくゆらぐアイデンティティを形づくる。それはつねに“ワーク・イン・プログレス”であるアイデンティティなのだ。
ホセ・ルイス・ゲリン映画監督・脚本家として、フィクションとドキュメンタリーを融合させ、ふたつのジャンルの境界を揺るがしてきた。代表的な作品に『イニスフリー』(1990)、『影の列車』(1997)、『工事中』(2001)、『シルビアのいる街で』(2007)、『ミューズ・アカデミー』(2015)などがある。これまでに、ヴェネチア国際映画祭、カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、サン・セバスティアン国際映画祭などの映画祭に出品している。批評家から最も評価され、国際映画祭で最も人気のあるスペインの映画作家のひとりとされる。
