YIDFF 2025 クロージング作品
よみがえる声
The Voices of the Silenced되살아나는 목소리
- 日本、韓国/2025/日本語、英語、韓国語/カラー/DCP/148分
監督:朴壽南(パク・スナム)、朴麻衣(パク・マイ)
撮影:大津幸四郎、星野欣一、照屋真治、朴麻衣、金稔万(キム・イムマン)、キム・ミョンユン
編集、製作:朴麻衣、ムン・ジョンヒョン
16mmフィルム復元協力:安井喜雄
出演:チョン・ドンネ、キム・ブンスン、ソ・ジョンウ、キム・ソンス、平野伸人
製作:朴壽南
製作会社:映画社ハルビン、アリランのうた製作委員会
提供:朴壽南
在日朝鮮人二世の朴壽南が約40年前から撮り続けていた16ミリ。娘の朴麻衣は膨大なフィルムの復元作業に取り掛かり、母のアイデンティティを取り戻す生涯の「旅」をともに辿る。母へもカメラを向けて撮影時の繊細な話に耳を傾け、次世代へ向けた映画作りを問い、ときに衝突をもする。歴史に埋もれた声なきものたちの物語とパーソナルな対話が行き交い、ふたりの果敢な共同作業は幾重にも増した輝きを得ていく。
【監督のことば】 1945年10歳の夏、天皇を神と信じてきた私は、日本の敗戦とともに祖国の解放を迎えた。この私に衝撃を与えたのは1958年の小松川事件だった。女子高生殺害の犯人として逮捕されたのは、李珍宇(イ・ジヌ)、当時18歳。日本名「金子鎮宇(かねこ・しずお)」と名乗っていた在日朝鮮人二世の少年であった。彼に自分自身の姿を見出した私は、死刑宣告された少年の減刑運動に参加していくが、記者として所属していた朝鮮総聯から、事件の関与から退くようにと勧告される。それに従わな かった私は、組織から「追放」され北の反国家人物として否認されていく。李珍宇の死刑執行後、1964年、私は韓国留学を志したが、韓国政府(朴正煕政権)は国家への忠誠を求め、それを受け入れなかった私の入国は許されなかった。こうして私は、自分のあるべき居場所、自分自身のアイデンティティを求める旅を始めた。広島へ、そして沖縄の戦場へ。朝鮮人原爆被害者、戦場へ連行された「慰安婦」、玉砕を強いられたウチナンチュ(沖縄人)。戦後、隠蔽された歴史の闇に光をあて彼らを記録し存在を回復させる旅は、私自身の復権への旅でもあった。(朴壽南)
本作は、母が1985年から91年にかけ2本の映画製作のために日本と韓国を取材した10万フィート(約50時間分)の16mmフィルムと、音声テープをデジタル化し復元することから始まった。30年以上が経過した未公開フィルムから、まず軍艦島に連行された在日朝鮮人一世の証言映像を復元していった。そして、日本の植民地支配と侵略戦争の犠牲者一人ひとりの体験を母の記憶を頼りに把握していった。「小松川事件」が問う差別と実存の問題は在日三世の私の問題であり、100年前の関東大震災から現在に至るまで朝鮮人差別が続く日本社会のあり方を問いかけている。歴史歪曲と排外主義が猛威を奮う今こそ、よみがえった声に耳を澄 ませてほしい。(朴麻衣)
朴壽南(パク・スナム)1935年生まれ。在日朝鮮人二世。小松川事件の少年被告囚との往復書簡『罪と死と愛と』(1963)を刊行。その後、朝鮮人被爆者の記録『もうひとつのヒロシマ』(1986)を初監督。主な作品に『アリランのうた ― オキナワからの証言』(1991)、『ぬちがふぅ(命果報)―玉砕場からの証言―』 (2012, YIDFF 2013)、『沈黙 ― 立ち上がる慰安婦』(2017)などがある。
朴麻衣(パク・マイ)1968年生まれ。在日朝鮮人三世。朴壽南の長女。『ぬちがふぅ(命果報) ―玉砕場からの証言―』に助監督として参加。『沈黙 ― 立ち上がる慰安婦』では編集、製作を担当。各種の映像記録の復元、アーカイブ化、自主上映の運営を継続している。
