わたしたちの記憶の館――旧吉池医院
山形市中心街、国道112号沿いで、ひときわ異彩を放つ洋風建築が「旧吉池医院」だ。日本近代建築の先駆者 中條精一郎(米沢市出身)が設計し、1912年に竣工した。閉院した今も、創建当時とほとんど変わらぬ姿で同じ場所に建つ。それは、明治の大火以降、戦争や災害の惨禍に遭わず、この街が100年以上も平穏だったことを意味する。人々のかけがえのない「記憶の館」――旧吉池医院では、YIDFF 2025の開催に合わせるかのように、保存・活用に向けた新たなステージのプロジェクトが始動する見通しだ。映画祭期間中、館内では歴史的建造物や地域に眠る映像資料の継承をテーマにした上映や展示を行い、映画祭参加者の交流の場として開放される。 また、映画祭の発展に貢献した故矢野和之氏の業績を振り返るメモリアル展示を行う。
「山形発! 建築ドキュメンタリー特集」
日本の近代建築史に関心を持つ者にとって、山形は避けて通れない場所だ。明治から昭和にかけての名建築が数多く残り、時代を牽引した巨匠たちを輩出した。こうした山形の濃密な建築文化を紹介するドキュメンタリーを上映する。
光の星霜 〜オリジナルテーマ曲で綴る旧吉池医院映像集
Hikari no Seiso: A Visual Collection from the Former Yoshiike Clinic with Original Theme Music
日本/2025/カラー/デジタル・ファイル/5分
撮影、編集:佐藤直記
音楽:小関佳宏
企画:近代建築山形ミュージアム委員会
「旧吉池医院」に魅せられたギタリストがテーマ曲をつくり、山形の景観をライフワークとする写真家が撮影を担当。1世紀以上のあいだ病院として使用された名建築の姿。設計した中條精一郎のデザイン力と精緻な装飾が冴えわたる、旧吉池医院の多彩な魅力を映像と音楽で堪能する。
やまがた近代化遺産
Modernization Heritage of Yamagata
日本/2007/日本語/カラー/Blu-ray/46分
監督:庄司勉
撮影:岡崎英治、渡部雅之
ナレーション:仙道隆
出演:志村直愛
製作会社:山形テレビ
明治初期の擬洋風建築や石橋が現存する山形県は建築・土木遺産の宝庫といわれる。こうした近代化遺産を訪ね、棟梁や技術者たちの思いや時代背景に焦点を当てる。YIDFF 2025の会場のひとつQ1(山形市立第一小学校旧校舎)の改修前の貴重な内部映像も登場する。
職人の謳 〜重要文化財 山形県旧県庁舎修復工事記録〜
Song of the Craftsmen: Documenting the Restoration of the Former Yamagata Prefectural Office, an Important Cultural Property
日本/1996/日本語/カラー/DVD(原版:16mm)/52分
演出、脚本:鈴木寛
撮影:柴田文夫
ナレーション:相川浩
企画、製作:千歳建設
旧山形県庁舎(1916年竣工)には、旧吉池医院での試みが随所に生かされており、中條精一郎が手がけたこれらふたつの作品は「兄弟建築」ともいえる関係を結んでいる。本作は、10年に及ぶ旧県庁舎の復原工事を丹念に撮影。漆喰装飾や銅板飾りなどに取り組む職人たちの真摯な姿を捉えた貴重な映像記録。
妖怪を見た男 〜近代建築界の巨人 伊東忠太の世界〜
The Man Who Saw Yokai: The World of Ito Chuta, a Giant of Modern Architecture
日本/2005/日本語/カラー/Blu-ray/46分
監督:庄司勉
撮影:小野寺政紀
編集:松浦健二
出演:鈴木博之、藤森照信、倉方俊輔
製作会社:山形テレビ
伊東忠太の代表作 一橋大学兼松講堂や大倉集古館に蠢く妖怪装飾。妖怪をキーワードに謎に満ちた忠太の建築思想の核心に迫る。YIDFFが2021年に開催した「金曜上映会」でこの作品が上映されたのを機に、出身地米沢に忠太の研究会が発足。埋もれていた忠太資料を次々と発掘している。
上映アフタートーク登壇者:岡田宗一(建築家)、宮野悦夫(山形県産業科学館前館長)、庄司勉(伊東忠太の会副代表)
ガラス乾板で蘇る街の風景
閉院した吉池医院の館内から、数十枚のガラス乾板が見つかった。そこに写し出されていたのは戦前の山形市中心街の風景や人々の暮らし。デジタル化したガラス乾板写真を今回初めて公開し、地域に眠る映像資料の保存と活用について語り合う。
- 日時:10月11日(土) 13:30−15:30
場所:旧吉池医院 診察室ホール
使用言語:日本語(通訳なし)
登壇者:熊坂俊秀(近代建築山形ミュージアム委員会代表)
