審査員
リシャール・コパンス
●審査員のことば
60年代末に映画学校に通っていた頃は、ドキュメンタリーをつくるという選択肢はなかった。ドキュメンタリーが台頭してきたのは1968年以後の政治闘争のさなかだ。突如として、デモやストライキを撮り、フェミニスト・アクションの新たな力強さを発見することがとても刺激的な映画づくりの方法となったのだ。とはいえ形式は最小限。音声は基本的なもので、編集も粗かった。けれども私は幸運だった。70年代の終わりに、私はリュック・ムレの『食事の起源』(1978)で撮影を担当した。アモス・ギタイの『フィールド・ダイアリー』(1982)を製作し、ロバート・クレイマーとの協働も始めた。すべてが意味をなすようにつながり始めたのだ。私はこれからドキュメンタリーを製作し、撮影し、あるいは監督していく。それは世界の情勢を扱う、政治的なものとなるだろう。それは10年前に『カイエ・デュ・シネマ』の面々が定義したような、「作家政策」の原則のもとで作られるものとなるだろう、と。時機もちょうどよかった。フランスのテレビ制作の独占状況は1974年に終焉する。フランソワ・ミッテランが独立系の制作者の育成に補助金を出し、1986年には文化的な放送局ARTEが新設された。まったく新しい世界が出現したのだ。監督たちはめいめいに新たな窓を開いた。取り上げる題材という面だけでなく、新たな形式を生み出す者として。可能性は無限にあった。それから40年。用いる手段は異なるし、資金集めも決して楽ではないけれど、われわれはいまなお新たな地平の発見に取り組んでいる。
フランスの映像プロデューサー、撮影監督、映画監督。1966年から1968年までフランス高等映画学院(IDHEC、現FEMIS)の撮影部門で学び、1973年から1979年まではミリタント映画コレクティヴ「シネリュット」で活動。1978年に自身の制作会社「レ・フィルム・ディシ」を設立し、2023年まで共同代表を務める。リュック・ムレ、ロバート・クレイマー、クレール・シモン、スタン・ノイマンらの作品で撮影監督を務め、プロデューサーとしてはアモス・ギタイ、リュック・ムレ、クレール・シモン、リヒャルト・ディンドー、ドゥニ・ゲールブラン、スタン・ノイマン、ロバート・クレイマー、ダヴィド・トゥブールらの作品をはじめ、200本以上のドキュメンタリーを手掛けたほか、ARTE放映の建築ドキュメンタリー・シリーズでは共同統括責 任者として20年で67本のエピソードを制作。TVドキュメンタリーでは65本でみずから監督を務め、長編ドキュメンタリー映画の監督作品として『Racine』(2002)、『Un Amour』(2015)、『Monsieur Deligny, vagabond efficace』(2020)、『ロバートを探して』(2024)の4本がある。
ロバートを探して
Looking for Robert- フランス/2024/フランス語、英語/モノクロ、カラー/DCP/73分
監督、脚本、撮影:リシャール・コパンス
編集:カトリーヌ・グズ
録音、音響:シルヴァン・コパンス
音楽:バール・フィリップス
製作:ミシェル・クラン、リシャール・コパンス
製作会社:レ・フィルム・アタリ、レ・フィルム・ディシ
配給:レ・フィルム・ディシ
ロバート・クレイマーと過ごした年月を振り返るリシャール・コパンス。プロデューサーとして、撮影時の照明スタッフとして、長年ともに働いた友へのビデオレターとして作られた本作は、クレイマー作品の断片や共同制作の記録映像を織り交ぜながら紡がれており、クレイマーへの優しい眼差しに満ちている。終盤では、『ルート1/USA』(1989)の撮影シーンが長めに挿入され、ブリッジポートの場面に登場する若い恋人たちは結婚の誓いを練習している。『ロバートを探して』もまた、ロバート・クレイマーへの愛の宣言なのだ。
*再訪やまがたクラシックスにてロバート・クレイマー作品を上映。
