審査員
アッザ・エル・ハサン
●審査員のことば
人には忘れられない場所というものがあるが、私にとって山形国際ドキュメンタリー映画祭はそのうちのひとつである。初めて山形に来たのは2001年だが、私はこの映画祭が醸し出す空気やその映画文化、そして観客たちにすぐさま夢中になった。ここで出会った友人たちとはその後も長く付き合うことになったし、ここで見た作品の数々は私の映画制作にも影響を与えた。それから24年経ち、今回の映画祭に審査員として参加できることがたいへん楽しみだし、選ばれし数々の上映作品への期待感も高まっている。ここで上映され る作品を見れば素晴らしい鑑賞体験が得られるに違いないが、それだけにとどまらず、今後私が映画制作をする上で、限界を飛び越え視野を広げてくれる新しい考えやアイデアを呼び起こす糧になるだろうという予感に心を弾ませずにはいられない。
映画監督。ドーハ大学院研究所でメディア学実践を教える教授でもある。2025年には英国映画テレビスクリーン研究協会から優秀功績賞を受賞。その他、ルキノ・ヴィスコンティ賞(Ortensia d'Argento-Sensibilità Mediterranea)、アルジャジーラ審査員賞(アラブ・スクリーン・インディペンデント映画祭)、グリアソン英国ドキュメンタリー賞最優秀新人賞など多数受賞。主な作品に、『ニュースタイム』(2001、YIDFF 2001)、『王侯とエキストラ』(2004)、『アスマハーンの耐えられない存在感』(2014、YIDFF 2015)などがある。2018年にはヴォイド・プロジェクトを立ち上げ、戦争や紛争の中で消失を免れた写真や映像を活用するマルチメディア制作プラットフォームを整備した。
王侯とエキストラ
Kings and Extrasملوك وكومبارس
- パレスティナ、ドイツ、フランス、イギリス/2004/アラビア語、英語/カラー/62分
監督、脚本:アッザ・エル・ハサン
撮影:パスカル・グラネル
編集:グラディス・ジュジュ
録音:モンセフ・ターレブ、ハンナー・アブー・セフデ、イブラーヒーム・シシャーニー
音響:スヴェン・ピースケル
製作会社:Ma.Ja.De Filmproduktion, Yamama Creative House
提供:アッザ・エル・ハサン
PLO(パレスティナ解放機構)の映画部門が制作していたフィルムは、1982年、レバノン・ベイルートに侵攻したイスラエル軍により奪い去られた。本作は、その行方を探すため鍵を握る人物たちへのインタヴューを重ねる定番のドキュメンタリー・スタイルをとりながら、カメラを介した被写体と監督のやりとりとフレームに映る風景、巧みなナラティヴにより、パレスティナの人々の置かれた不条理な現実を浮かび上がらせる、上質な〈ロード・ムービー〉でもある。
