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トレパネーション

TrepaNation

シリア、フランス、ドイツ/2025/アラビア語、ドイツ語、フランス語、ダーリ語、フィリピン語、チェコ語/カラー/DCP/222分

- 監督、脚本、撮影、編集、録音、ナレーション:アンマール・アルベイク
挿入歌:ニーナ・ハーゲン「Naturträne」
特別出演(プロデューサーとして):ジル・サンドズ(GS)
製作会社:Shams Films at Grammar Factory, GS
提供:アンマール・アルベイク

内戦下のシリアからドイツへ逃れた映画作家が、難民認定されるまで暮らした〈難民キャンプ〉の記憶を紐解く。首都ベルリンから遠く離れた工業地帯に佇む殺風景な居住棟。2014年から約1年間過ごした建物は、もはや解体されその地にはない。かつて確実に存在した同胞たちとの日々は、カメラの記録に残るのみだ。自己と他者とを結びつけたレンズの穿孔は記憶を辿る動線となって作家を導き、故郷と失った家族への愛、キャンプの同胞たちや出会った人々に対する憧憬が圧倒的な熱量で綴られる。カタストロフィに抗い生をつなぐための映画による抵抗。(KH)



【監督のことば】ベルリンで私は、救いの象徴的な三角形で自分が武装していることに気付いた。街の郊外にある難民キャンプで難民たちが共有していたトラウマから生まれた三角形だ。亡命中に作られたこの三角形は、シリア人だけでなく、多くの国の人々を結びつけた。それは痛みの中で描かれ、3人の指導者、ジャン=リュック・ゴダール、アレクサンダー・クルーゲ、ディエゴ・マラドーナによってひとつになった。この3人は、抵抗、知性、感情を体現する指針となった人たちだった。

 ゴダールは私からダマスカス製の数珠を受け取り、珍しく子どものような笑顔で応えてくれた。マラドーナは予期せぬ出会いで、私とサイン本を交換し、キスをしてくれた。彼の温かさのおかげで、恥ずかしさは強さに変わった。クルーゲは哲学的な明晰さで、私にドイツ製の道具を与え、すべてを理解する手助けをしてくれた。彼らの精神は私の映画に深く織り込まれている。

 この映画は、捨てられた山のような食べ物の背後にあるキャンプのキッチンの、文字通り残り物の中から生まれた。その視覚的かつ物語的構造は、この三角形の救済を反映している。その最終段階で、思いがけない贈り物が私に与えられた。私が戦友アブー・アリーの顔から取り出された破片をつかんだ瞬間、戦争の遺物は知恵の象徴に変わったのだ。その断片は22秒間画面に映し出されるのだが、それが持つ意味を私は一生忘れないだろう。

 映画とサッカーは、孤独、抵抗、フェアプレーという共通の考え方を共有している。この映画を通して、私はキャンプの記憶だけでなく、政治的で詩的、そして深く個人的な、私自身の視線の根源へと立ち返る。

 これは亡命についての映画ではない。亡命によって映し出された映画である。


- アンマール・アルベイク

シリア・インディペンデント映画とコンセプチュアルアートの開拓者。1995年に『Light Harvest』で映画制作のキャリアをスタートし、シリア人映画監督としては初めて、ヴェネチア国際映画祭で『彼女の墓に花をそえるのは私』(2006、YIDFF 2007)と『The Sun's Incubator』(2011)が上映さ れた。釡山国際映画祭で審査員賞を受賞した『The Sun's Incubator』は、シリア革命を描いた作品の中では初の映画賞受賞作品となった。その他の作品に『サーミア』(2008、 YIDFF 2009)などがあり、監督作品はベルリン国際映画祭、ロカルノ映画祭などで上映されている。2019年にはハウス・アム・ヴァルトゼーで回顧展を開催するなど、その幅広い活動から生まれた作品には美術館に所蔵されたものもある。