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審査員
エドウィン


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●審査員のことば

 私は映画について詳しいわけではありませんが、ひとつ確かに感じていることがあります。それは、映画の内部にいることへの愛です。映画を見るようになる前には想像もしませんでした。光と影、音と沈黙の中に、夢と記憶を編み込むことができるということを。 しかし今でさえ、ひとりの映画作家として自分を名乗る時、滑稽に思えることがあります。映画作家の仕事とは結局のところ何なのでしょう? スクリーンやプロジェクターを作ることでしょうか? セルロイドそのものを作ることでしょうか? 夢を捉えることは本当に可能でしょうか? そしてもし可能ならば、どうすればその捉えがたいものを再構築できるでしょうか。考えるほど、それは不可能な仕事に思えます。

 ひとりのインドネシア人として、私は時に超現実的で滑稽に思える世界を生きてきました。そこでは歴史と事実が腐敗した権力によって歪められているのです。そうした世界では、おそらく、夢こそがより誠実な真実を与えてくれるのです。私にとって映画は聖域となりました。その聖域はアーカイヴされた夢が陳列された図書館であり、その夢たちがごまかしのない真実を語り続けるのです。


エドウィン

インドネシア出身の映画作家。短編、ドキュメンタリー、劇映画を手がける。主要な作品として、『Kara, Daughter of a Tree』(2005)、『空を飛びたい盲目のブタ』(2008)、『Postcards from the Zoo』(2012)、『復讐は私にまかせて』(2021)があり、シュルレアリスティックな趣でアイデンティティと記憶を探究している。 作品はカンヌ、ベルリン、ロカルノといった主要な国際映画祭で上映されている。ジャカルタのインディペンデント映画の上映スペース「キノサウルス」の共同創設者。自身が参加するインドネシアの映画保存団体Lab Laba Labaは、2015年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で作品の展示とワークショップを行った。



舟の上、だれかの妻、だれかの夫

Someone's Wife in the Boat of Someone's Husband

韓国、インドネシア/2013/インドネシア語/カラー/DCP/55分

- 監督、編集:エドウィン
脚本:エドウィン、セノ・グミラ・アジダルマ
撮影:アマリア・トリスナ・サリ
録音:ワヒュ・トゥリ・プルノモ
出演:マリアナ・レナタ、ニコラス・サプトラ
製作:メイスク・タウリシア
字幕協力:東京国際映画祭

インドネシア東部マルク諸島サワイでは、船乗りスカブと人妻ハリマによる100年前の恋の伝説が語り継がれている。この伝承を知ったマリアナは、彼らの恋の跡を辿ろうと島を訪れ、住民たちに聞き取りを行う。これといった成果を得られずにいた彼女はスカブという名の旅人の男と出会い、やがてふたりは伝説と溶け合うように親しくなっていく。民俗学の調査のように始まった映画は、ダイナミックな自然とともに魅惑的なファンタジーへと変貌を遂げる。