審査員
クリスティーナ・ピッチーノ
●審査員のことば
初めての訪日で向かった地、批評家・ジャーナリストとして初参加したのが山形国際ドキュメンタリー映画祭であった私にとって、この映画祭で審査員を務めることは大きな喜びだ。あらゆるジャンル、あらゆる時代の偉大な監督や作家たちを通して日本を知り、愛してきた私にとって、いまなお発見と啓示の源泉であり続けるこの国は、映画と言えばここしかないと思えるほどの場所になっている。
審査員とは作家とされる人たちの映像を発見する機会であり、同時代の映画で起きていること、その現在の潮流や見落としているものを理解するための、つまりは新たな地平に目を開くための重要な手がかりにもなる。
私は「ドキュメンタリー」と「フィクション」とのあいだに残念ながらいまだ存在している分け隔たりというものがどうも好きになれない。映画とは時間や空間、光や形態、詩学や政治が問題になるものであり、なかでもドキュメンタリーは、世界の現実との絶え間ない比較の中で映像に問いを投げかけるがゆえに、より独創的で、より自由な実験に向かうことが多くある。
これはひいては、確かとされるものを疑うことに私たちを向かわせることになり、映画の実質であり驚異であり強みでもあるところの「聞くこと」をもたらす。それこそが同時代性の生き生きと感じられる映像や虚構を、その矛盾も、周囲を取り巻く映像のカオスのなかで私たちに見えていないものも、画面外に留まったままの物語も、世界の感覚も含めて構築することを可能にしてくれている。
批評家、映画ジャーナリストにして、イタリアの日刊紙 「il manifesto」映画部門編集主幹。ドキュメンタリーや実験映画やリサーチ映画のための国際映画祭「フィルムメーカー・フェスティバル・ミラノ」でプログラマーを務め、ローマに国際色豊かなキャンパスを置くNABA(新美術アカデミー)ではヴィデオアートやドキュメンタリー映画制作について講じてもいる。これまでジャン=ガブリエル・ペリオやバニ・コシュヌディらを講師に招聘して映像収集保存のマスタークラスをいくつも企画。編集を担当した書籍にピーター・ホワイトヘッドやエイアル・シヴァンのモノグラムがあり、イタリア映画や国外の映画についての論集への寄稿も多数。ダヴィッド・ディ・ドナテッロ映画賞選定委員。ローマ在住。
