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[インドネシア]

シエ...

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インドネシア/2024/シッカ語、インドネシア語/カラー/DCP/30分

- 監督、撮影、編集:ヨセフ・レヴィ
編集:ジェームス・ナトバイシュ
音楽:ミカエル・A・リウラ
音響:プリマ・セティアワン
カラリスト:ムダ・ブディマン
製作・編集スーパーバイザー:シャラフディン・シレガル
製作:エルシン・プカ
提供:Loka Pola

人々が去った、山あいの肥沃な谷。ノナはひとり、庭で作物を育て、動物や鶏たちを養い、盗賊から守り暮らしてきた。時がきて、彼女はこの土地を守る役割を弟に託し村へと降りた。ランプは灯し続けなければならない。伝えどおりにサイクルは引き継がれ巡り出す。ひと時、村で妻マリアを見舞い、山へ戻ると、ヤギが姿を消していた……。シエ、シエ……呼びかけに返る声はなく、音は森へと消えてゆく。養い守るものへの恵みが奪われる不条理。水音とともに何ものかが満ちるインドネシアの湿潤な森の中、守護者はただ祈りのように営みを続ける。(NKY)



【監督のことば】私が18年間暮らしたパプア州を離れ、マウメレに戻った理由は、私の家族と親戚との関係が、主に土地の受け継ぎのいざこざで崩れてしまったからだ。語り継がれてきた先祖の代の物語は、一部の親戚の物欲のせいでねじ曲げられてしまった。そのようなことを防ぐため、特にまだ健在なお年寄り世代から、ゲイ山にまつわる話を聞いて記録することにした。

 父と一緒に畑に行く時は、撮影するため常にカメラを持っていく。ある日、3匹のヤギがいなくなっているのに気づいたわれわれはショックを受けた。以前にも何度か盗まれたことを思い出しながら、父は驚くほど打ちひしがれていた。 昔からゲイ山の北部は、作物や家畜を盗まれることが多い。慣習法を厳しく適用しても、泥棒たち、または泥棒になるかもしれない者たちは盗むのをやめないのだ。

 この映画では、より大きな問題に目を向けながら、これらの経験を語っていく。地元の人たちの知恵を集めて、ともに暮らしていくというスタイルは捨てられ、失われてしまったようだ。受け継いだ土地をめぐるいざこざや盗難は、ともに暮らしていく上での道しるべとなる価値観の喪失によって引き起こされた、社会の混乱を表している。これらの問題は、社会をひっくり返した植民地時代からの遺風の影響だと私は考えている。すべての人が野心や、権力への意志を捨て、他者に対して善行をする責任があることを理解すれば、再び理性あるコミュニティになると信じている。かつて私の父が自分の畑のひとつを、泥棒たちが耕すために差し出したように。


- ヨセフ・レヴィ

フローレス島のマウメレ生まれ。パプア州ジャヤプラにあるセンドラウェシ大学で文化人類学を専攻。フォーラム・ レンテン主催のワークショップ、ハラマン・パプアのプログラムを通じて、初めてドキュメンタリー映画について学ぶ。2023年、インドネシア・ドキュメンタリー・ラボ2023に参加し、制作助成金を獲得。現在は故郷のマウメレで、新たなドキュメンタリー制作という冒険に乗り出している。