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審査員
タイディ


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●審査員のことば

 私が映画の面白さに開眼したのは2005年頃だが、なかでもドキュメンタリー映画の魅力にはすぐに虜になった。権力者によって真実が歪められ、検閲のせいで多くの声が沈 黙することが多いこの国では、ドキュメンタリーは実際の物語を観察し、つながり、共有する方法となった。

 私は撮影監督としてスタートし、遠い国や地域を旅しては、自分とは大きく異なる他者の生活に目をやるようになった。時はゆっくりと流れ、撮影クルーは辛抱強く観察する。そんな活動を通じて、私は、自分たちを取り巻くより深い社会的政治的現実を理解するようになった。

 2010年以降、ミャンマーで民政移管が進むと、インターネットの高速化と創造的な自由の拡大により、新たな機会がもたらされた。妻のトゥートゥーシェインと私はヤンゴンでワッタン映画祭を共同で設立し、短編映画やドキュメンタリー、実験映画を上映した。映画制作者にとって刺激的な時期だった。

 しかし、2021年の軍事クーデターの後は、すべてが変わった。自由は消え去った。多くの映画祭が中止になった。と同時に、ドキュメンタリー映画の制作は、抵抗、追悼、生存のためのツールとして、さらに重要になったのだ。

 私の親しい映画制作者仲間のなかには、現在亡命中か、投獄中、またはこの世を去った者すらいる。仲間たちは、私が山形に招かれたことを誇りに思うだろうし、あるいはちょっと羨ましがるかもしれない。だからこそ、彼らとの1本を山形に持ってきたのだ。彼らの声と精神が生き続けることができるように。

 あるいは、また別の空の下で、彼らと隣り合って座り、酒を酌み交わし、大いに映画を語る日だってくるかもしれない。


タイディ

ミャンマー・ヤンゴン出身の映画制作者。プラハ芸術アカデミー映画テレビ学校、ヤンゴンの国立文化芸術大学で映画制作を学んだ。2011年に、ミャンマー初の映画祭であるワッタン映画祭を共同主催。2013年にはミャンマーにおけるインディペンデント映画の発展と制作に特化した会社、Third Floor Film Productionを設立した。現在もミャンマーで映画制作に携わり、監督としてもプロデューサーとしても活躍し続けている。



タイディ短編集
ブーゲンビリアの町

The City of Bougainvillea

ミャンマー/2023/ビルマ語/カラー/DCP/15分

- 監督、撮影:タイディ
編集:エミリースゥエー 
音響:エーディ
出演:ウィッイーチョー、テッアウンリン
エグゼクティブ・プロデューサー:ケイコセイ
製作、提供:トゥートゥーシェイン

ビルから転落して謎の死を遂げた婚約者のため にある女性が真実を突き止め正義を追求しようと決心するのだが――。



ディア・ヤング・レディー ある1枚の記録

Dear Young Lady, a Sheet of Record

ミャンマー/2011/ビルマ語/モノクロ/DCP/3分

- 監督:タイディ、トゥートゥーシェイン
着想:アウンチェインの詩「Dear Young Lady, a Sheet of Record」
提供:トゥートゥーシェイン

自宅軟禁されていたアウンサンスーチー(The Lady)が解放され、国が民主化への道を歩む希望が見えた2011年。本作は、同題のアウンチェインの詩にインスパイアを受けて製作された。