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[インドネシア]

スベルトノ・モーテ

The Silent Path
Soebertono Mote

インドネシア/2024/インドネシア語、オランダ語/モノクロ、カラー/DCP/77分

- 監督、編集:ヨンリ・レヴォルト
脚本、音響:レンディ・N・リザル、ヨンリ・レヴォルト
撮影:シャイフル・アンワル、レンディ・N・リザル、フェビアン・カキシナ
音楽:ラリー・ニケル、ジェイソン・ランティ
製作、プロダクション・デザイン:レンディ・N・リザル
出演:ランベルツ・E・H・ハーヘンドーン、レスティトゥティ・“チチ”・ベタウブン、ベンソン・ヒュワット、ロバート・ヒュワット、フェビアン・カキシナ、ジェフリー・マネハット、リナ・ニングシー
制作、提供:Yoikatra

パプアで宣教師として活動し、エイズ予防の性教育にも尽力したオランダ人神父ベルトの半生を描く。監督による手記の朗読やインタヴューを通じて、激動の時代を生きた神父の歩みが丁寧に紐解かれていく。自由奔放で、ときに実験的なカメラワークに、豊富なアーカイヴ映像を巧みに織り交ぜながら、植民地主義への鋭い批判を展開する一方、監督が幼少期から親しんできた神父への深い愛情が滲み出る。観客を惹き込む意外性のあるオープニングに始まり、全編を通して独特のユーモアと濃密な世界観が炸裂する。(MA)



【監督のことば】本作でわれわれが呈示するのは、“スベルトノ・モーテ”ことラン ベルツ・ヘンリクス・ハーヘンドーン、ベルト神父としても知られた彼の私事にわたる現実と、パプアでのその生活である。作中では、その50年間の布教人生のなかに同時に存在した愛、武力衝突、植民地主義について、彼の見解が語られている。カトリック司祭としてのベルト神父は、まずもって福音を説く宣教師であり、思想家であり、尊敬を集める公人だった。だがその背後には、あまり知られぬまま語られていない物語が秘められている。ベルト神父は彼にとって未開のパプアが近代化を強いられていると思われるような事態を、50年にもわたって目の当たりにしてきた。彼はまた、コンドームの使用やフェミニズムや独立を訴え、多くの人びとの考え方を変えた人でもあった。これらはパプアではタブーとされており、とくに独立については、分離主義との嫌疑をかけられしばしば迫害につながるものでもある。彼は新型コロナで死去するまで建設的なことを多く為しながらも、これまでその意味までは深く理解されてこなかった。彼はパプアにひとりきりでやって来て、ひとりきりで死んだ。本作は彼への敬意を忘れぬよう、そのしるしを次世代に向けて残すものとしてある。とはいえわれわれにとって、もちろん彼はすべてを解決してくれる救世主ではない。彼の着任と旅立ちは、ここで賛美されるためにあったのではない。人権侵害に社会や教育の不平等――多くの問題が未解決のまま残っているが、われわれはそれが彼の為すべき仕事だったわけではないことに気づいたのだ。彼の務めがパプアに意欲や鼓舞をもたらし、知識を授けることだったとすると、それをわれわれの考える自由という理念の伝達装置に変えることができるのは、われわれ映画作家のほうである。他方でわれわれは、国家が独立運動を分離主義とみなしていることも重々承知している。しかし当然ながら、本作の目的はそこにない。パプアの人びとには独立もなければ思考や行動の自由もないと知らしめること、それこそが本作の目指すところなのだ。さしあたっては、伝えるための橋を架けること――それは、われわれが映画の元来の務めと思っているものでもある。


- ヨンリ・レヴォルト

1992年ウジュン・パンダン生まれ。映画作家、ジャーナリスト。パプア州ティミカで自身が創設したコレクティヴ「ヨイカトラ・コミュニティ」で複数の映画を制作し、市民ジャーナリズムのプロジェクトを展開してきた。映画作品として『Mama Fin』(2015)、『Inside Sack』(2018)、『Karlota』(2021) などがある。『Mama Amamapare』(2016)は、インドネシア・フィルム・フェスティバル(FFI)で最優秀短編ドキュメンタリー賞を受賞。『Mayday! May Day! Mayday!』(2023)は ロッテルダム国際映画祭(IFFR)でプレミア上映され、2023年のFFIで最優秀ドキュメンタリー賞にノミネートされた。長編2作目となった本作は2024年のIFFRでプレミア上映され、ジョグジャカルタドキュメンタリー映画祭(FFD)で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。