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[シリア、フランス]

3350キロメートル

3350 KM
٣٣٥٠ كم

シリア、フランス/2023/アラビア語/カラー/DCP/13分

- 監督、撮影:サラ・コンタル
編集:ロール・デプレ・カティブ
録音:リタ・マフムード
グラフィック:アミーン・アブ・カシーム
カラー・グレーディング:マフムード・ハムード
提供:サラ・コンタル

あの曲の歌詞は何だっけ?と問いかける娘である監督と、別離の痛みをひたすらに吐露する父。不安定な接続の中でのビデオ通話は嚙み合わず、フランスとシリア、3350km離れたふたりを繫ぐのはGoogleマップのみである。決して埋まることのない距離を少しでも縮めようとする画面越しの試みは、その距離の遠さをよりありありと突き付ける。娘は、その遠さの前に立ち尽くすように噛み合わない通話をじっと見つめる。その視線の先に、あの曲を歌ってくれた幼き日の父の姿を見出そうとしているのかもしれない。(HN)



【監督のことば】亡命中のパリの私の部屋で、父とのインターネット電話の会話を録音しようと考えた。故郷シリアを離れて7年、彼自身がよく言う「過去と失われた未来の亡霊」の中に取り残された、私の父から遠く離れた場所で。

 頻繁に途切れるこの電話でのやり取りの中で、父はシリアの状況や、私のいない彼の地での父の日常や孤独や心の痛み、さらにさまざまな感情について話してくれた。私が撮影したこの映像は、父と私を近づけてくれると同時に隔ててもいるのだが、このピクセル化されたフレームこそが私のコミュニケーションの限界とも言える。映し出される埃の粒々の中に、私は日に日に薄れつつある昔の記憶や、切り取られた私の人生、そして到底戻ることができない私の母国を感じとるのだ。

 この映画は短いドキュメンタリーであると同時に、シリアの経験や、亡命と祖国とか、父と私とか、外にいるよそ者と内なるよそ者などといった関係性を、短く個人的な視点で探求した作品でもある。私たちをつなぐのは、しばしば途切れる電話の音だけ。その音声を通して、私たちはともにいようとする。


- サラ・コンタル

2016年からフランスを拠点に活動するシリア人アーティスト、フォトグラファー、映画作家。パリ国立高等装飾美術学校(ENSAD)にてアニメーション映画の修士号を取得。『A Wave』(2020)や『Back-And-Forth』(2022)といった実験的な映像作品が2022年にパリのポンピドゥー・センターで紹介され、2023年にはパレ・ド・トーキョーで展覧会を開催。作品制作ではシリアのルーツと亡命体験をテーマとしている。ディアスポラを含めたシリア人のビジュアル・ストーリーテラーたちのためのプラットフォーム「Al-Ayoun」の創設者。