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[ドイツ]

パラジャーノフ、ゆうべはどんな夢を見た?

What Did You Dream Last Night, Parajanov?
Was hast du gestern geträumt, Parajanov?
؟دیشب چه خو ابی دیدی پار اجانف

ドイツ/2024/ペルシャ語/カラー/DCP/81分

- 監督、脚本、撮影、編集:ファラズ・フェシャラキ
撮影:モーリッツ・フリーゼ、シャハブ・フォトゥヒ
整音:ヤン・パーゼマン
音響:サムサム・シェン
製作:ルイーゼ・ハウシルト、エヴェリナ・ロシンスカ、マリアム・シャトベラシュヴィリ
配給:Oyster Films、Christina Demetriou

ベルリン在住の監督が、遠く離れたイスファハーンの両親や、ウィーンに暮らすいとことの他愛ないオンラインでの会話を、10年間にわたり撮影。通信環境ゆえか、ノイズにまみれた両親との会話では、世間話の合間に、父による詩の朗読や、母が投獄されていたときの記憶の語り、そして離れて暮らす子どもを思慕する言葉が挟まれる。一方で、監督を「パラジャーノフ」と呼ぶ同世代のいとことは、軽やかなユーモアに富んだ会話が重ねられる。監督にとってかけがえのないふたつの時間が、映画の中で交錯していく。(OR)



【監督のことば】どうしてSkypeの通話を録画しているのかと母に訊かれたことがある。 2012年、わたしがドイツに移住して数か月後のことだ。わたしの回答は、録画は日記のようなもので、自分は日記を書き留めるほどマメな人間ではないし、書いたとしても言葉ではその時間の美しさをかくも詳細に、これほど正確でこうも忠実に捉えることは絶対できない、というものだった。

 ウェブカメラの前でセーターを編みながらわたしのことを待ち、ひとり鼻歌を口ずさむ母の姿をこっそり見ていたなんてことを、いったいどのように書き記せばよいのだろう? 父親が好きかと自分の父に問われ、まじめに答えられなかったときのことをどう言葉にすればよいというのか? 投獄されたときの母の話に笑わされてどんな感じがしたのかを述べる言葉も、わたしはいまだに持ち合わせていない。カメラだけがそれを記録できたのだ。

 「カメラは嘘をつかない」と、アッバス・キアロスタミはかつてワークショップでそう言っていた。「カメラは信用できる」。それこそが、ああした時間を録っておいた理由である。

 映画が完成したいま、もはやそれにも確信がもてなくなっている。カメラが嘘をつかないなら、どうして日ごとの編集作業を終えるたびに自分の家族の新たな一面を発見することになったのか? それはいまだに謎のままだ。映画のなかのどれが本当にあったことで、どれが編集段階で作られたものなのか、自分でももう思い出せないのである。

 「リアル」なフェシャラキ家を忠実に描くドキュメンタリーをつくろうとしたことは一度もない。わたしの興味は人びとが互いに愛情を示すときにおのずと生じるささやかな語りにあった。その意味ではカメラはやはり信用できるのである。というのもここでカメラが捉えたものはどれも、愛や恋しさやあふれる希望とともに起きた事柄ばかりだからである。


- ファラズ・フェシャラキ

ベルリン在住のイラン系ドイツ人映画作家で、撮影技師としても数々の受賞歴がある。テヘラン芸術大学在学中には演劇・映画研究を専攻しつつ、アッバス・キアロスタミのワークショップに参加。撮影を担当したベルリン・ドイツ映画テレビアカデミーでの卒業制作作品『ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう』(2021、アレクサンドレ・コベリゼ監督)はベルリン国際映画祭でプレミア上映され、国際映画批評家連盟賞を受賞。同作はセビージャ映画祭とドイツ映画批評家アワードでも撮影賞を獲得した。これまで撮影を担当した『Arthur & Diana』(2021、サラ・サマ監督)、『Natureza Humana』(2023、モニカ・リマ監督)などの作品も各国の映画祭で上映されている。本作は監督としての初の長編作品である。