ノー・エクソシズム・フィルム
No Exorcism Film- タイ/2024/英語、タイ語/カラー/DCP/20分
監督、撮影、編集:コムタック・ナパッタルーン
音楽、整音、音響:タナート・ラサノン
製作、提供:ダノー・ナパッタルーン、Rare Occupant
デジタルで記録されたタイの都市の崩れかけたイメージ。幸運のお守りに人生を救われた経験を力説する男性、建設されゆく高層ビル、嵐にさらされる木、市場や遊園地、などといった映像が、古いテレビ画面に映し出されたような質感で重ねられていく。悲観的な機械音声が囁くように繰り広げる詩的な会話では、先人への罪悪感や未来へのおそれが吐露されている。現在のタイに生きる人々の不安が非常に屈折した形で表されているようにも見え、あるいは電脳世界に接続されたロボットが悪夢を見るとしたら、このようなものかもしれないとも思う。(IST)
【監督のことば】前回のドキュメンタリー作品でヴォイスオーヴァーの制作プロセスの縛りのきつさに懲り懲りし、これは自分の肌には合わないと悟ったのだが、本作はいわば、その経験からの直接的な反動である。音声読み上 げソフトの探求に精を出すことになったのもそのためで、驚いたことにそうした人工的な声で読み上げると、帰国して再びタイで暮らすことにひどく深刻な不安を抱いていたわたしの心のうちをすんなり伝えることができたのだ。この発見は、真実味や自由の解放的な感覚をもたらした。人工的なもの、虚構のもの、本当でないものを受け入れることはどうやらわたしにとって、少なくとも今のところは、現実をいっとき忘れさせてくれる救いとなっているらしい。
コムタック・ナパッタルーン2016年、アッバス・キアロスタミがキューバで行ったワークショップに参加。2024年にはベルリナーレ・タレンツに選ばれた。初監督した長編ドキュメンタリー『Hours of Ours』(2023)はヴィジョン・デュ・レエルでプレミア上映された。全州国際映画祭やBFI映画祭、シンガポール国際映画祭、ジョグジャカルタドキュ メンタリー映画祭、マル・デル・プラタ国際映画祭、ソウル国際実験映画祭、タイ国際短編映画祭で作品が上映されている。そのほか、バンコクビエンナーレや、Protocinemaが主催する美術展、タイランドビエンナーレの「Open World Cinema」、「Ghost2568: Wish We Were Here」などの企画にも参加。本作ではアイデンティティの脱構築、帰属への不安、移民のナラティヴ、そして歴史的な翻訳について探求し、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭の「NEW:VISION」プログラムで上映された。
